とある堕天使のモノガタリⅡ
~MIDRASH~
“ウイッカ”と思われる集団はその日は現れなかった。
ニックの話だと、通常“ウイッカ”の集会は満月の夜に行われるらしい。
宗教的な要素がなくても昔から人々は満月を崇めてきた。
その美しさから、月に神が住んでいると考えたのだ。
実際はそんな訳ないのだが…
どちらにせよ、満月の夜に集会があるのだとすると、まだ“ウイッカ”が現れるまで一週間近くあるはずだ。
『ロイから預かったカメラは3つだったな。』
『そこと…あそこと…あの辺りなら死角もカバー出来るか?』
虎太郎が3箇所指を差し示すと右京はその場所にカメラを固定した。
『丁度1時か…明後日また来れば大丈夫だな。』
『ごくろうさん!
テストするからちょっと待機してて。』
インカムから聞こえたロイの声に右京は『ラジャー』と答えた。
「あ~右京…明後日なんだけどさ…右京が交換に来れるかな…」
「構わないけど…なんかあるのか?」
「なんつーか…デート?…みたいな…」
「リサか?…珍しいな…デートなんて。」
右京がそう言うと虎太郎は溜め息をついた。
「…嫌なのか?」
「嫌じゃないんだけど、最近リサが怒りっぽくてさ…
シンディに話したら“デートでもしてご機嫌を取れ”って…」
それを聞いた右京はキョトンとした顔をしたかと思うと、突然笑い出した。