とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~


黒服の人々が数名ぞろぞろと洞窟内に入ってくる様子が見える。


中央に横たわる男を囲むように集まると何かを話していた。


『話してる事が分かればいいんだけどな…』


ポツリと零したロイの愚痴にアランは『ヒューガ判るか』と聞いた。


『儀式の手順について話してる。』


話の内容からしてシモンズがシャーマン的役割を担うようだ。


『…男が目を覚ましたぞ…』


が、ただ天井の一点を見つめて動かない…


そんな男を気にもせず、黒服の集団は少し離れた位置に膝を着くとなにやら唱え始めた。


その光景は正に魔女そのものだった。


儀式が始まってしばらくすると、中央に横たわった男に異変が起きた。


『まずい…!何かが憑こうとしてる!』


呻きと共に激しく痙攣を起こした男にアランは声を荒げた。


右京は黒く淀んだ空気が洞窟内へと流れ込んでいるのに気付いた。


『何かわかるか!?』

『これは…』


邪悪な気配はあるものの、正体がわからない。




この気配…俺は知っている…?




虎太郎の脳裏にそんな考えがよぎった。

いつどこで感じた事があるのか思い出せない。


だが、このまま事態を見過ごす訳にいかないのが現状だ。


『非常事態だ。
儀式を中断させる。』


虎太郎の様子を見てか、右京はそう短く言葉を発すると、サングラスの奥の瞳をやや光らせた。


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