とある堕天使のモノガタリⅡ ~MIDRASH~



アランはその言葉にほっと胸をなで下ろした。


『どうする?シモンズを拘束するか?』

『いや…もう少しだけ様子を見よう。』


モニターに映るシモンズが肩を揺らせて笑う様子を見ながらアランが答える。


男には悪いが、シモンズの愚考を挫く必要があった。


『あの男は“生贄”かもしれない。』


アランがそう言うとシンディは『そうかしら…』と疑問を口にした。


『生贄ならいっそ息の根を止めた方が儀式も楽だわ。』

『…確かに…途中で目覚めて暴れ出したら手が付けられない。』


とくに男を縛るでもなくただ仰向けに寝かせただけだ。


だとすると…何をするつもりだ?


『“ネクロマンシー(降霊術)”…』


ニックの呟きにその場のみんなが一斉に振り返った。


『一番可能性が高くないか?

あの男は今気を失っているだけだけど、“仮死状態”に見立てれば…』

『…つまり、あの男に何かを降霊させるつもりだと?』


ネクロマンシー(降霊)…つまり人間の体を使って霊を憑依させる黒魔術である。


霊と言っても死者の霊だけではない。

悪霊や怨霊、精霊すら降霊する場合もある。


『その仮定は当たりかもしれない。
…人が来た。』


スピーカーから聞こえた右京の声にモニターを振り返った。


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