君の世界で私は、

 神崎真紘(かんざき まひろ)。
 元モデルのお母さん似の恵まれた容姿は自分でも自覚しているらしく、自他共に認めるナルシスト。お父さんは成功した実業家で、お金にも困ってない。
 女の子にキャーキャー言われるという芸能人かよっぽどの人じゃなきゃ味わえないような待遇を当たり前のように浴び、当の本人は「え? 俺が通るんだから当たり前じゃん(笑)」と、奇跡的なナルシスト具合を発揮していた。
 仕方がない。彼は事実、(見た目は)いい男なんだから。

 そんな真紘と私は幼なじみだ。
 お母さんが真紘の家のお手伝いさんとして通っていたのについて行ってたら、いつの間にか真紘の遊び相手に任命されていたのだ。なぜ断らなかった私。
 まぁそのくらい濃いお付き合いがなければ、こんな筋金入りのお馬鹿のことを外で36分も待ってない。


「なー、柚葉いつになったら戻ってくんの?」
「またその話ですか」

 わざとらしい敬語で返して目を細めた私に真紘は「なー、いつ?」と子供のように繰り返した。

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