おたく王子
躊躇



ドキドキしていた。


なにせ鞄の中に手作りクッキーなどという朝日にとっては超!乙女チックな品物が入っているのだ。


割れたりしたら大変・・・。


苦労して作ったぶん、クッキーへの思い入れは強い。
努力の結晶を無駄にしまいと慎重に歩く。



「朝日ちゃんっ」


「わっ!」


校門に入ったところで後ろから肩を叩かれた。
鞄のクッキーに意識を集中していた朝日は心の底から驚いた。

見ると眞子が微笑んで立っている。


「びっくりした・・・眞子ちゃんか・・・。あ!今の衝撃でクッキー割れたかも!?」


焦る朝日に眞子はクスリと笑った。


「さすがに今くらいの振動じゃ割れないと思うよ。朝日ちゃん心配症だね」


「そ、そう?」


眞子に笑われて朝日は頬を赤くした。


「あ、斎藤さん」


「!!!!」


朝日は危うく鞄を落としそうになった。

バッと振り返ると香山是人が相変わらずのボサボサ頭で立っていた。


「何するのよ、危ないじゃない!」


「?・・・別になにもしてませんけど。なにが危ないんですか?」


朝日に怒られて是人はきょとんとしている。
確かに是人は声をかけただけで何もしていない。


「あ・・・あんたに関係ないことよ!眞子ちゃん、行こ」


「え、あ、朝日ちゃ・・・」


バツが悪そうに朝日は眞子の手を引いてそそくさと教室へ急いだ。




「なんだ・・・?あの人」


是人は全く意味がわからず首を捻るのだった。




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