彼に恋した夏(方言企画大阪弁編)
小春ちゃん…

ごめんな。


小春ちゃんなりに
真剣にやってたのは
分かるんだけど…


俺が俯いていると


『…抱きあったりなんか…
せんよ?』


小春ちゃんがぽつりと言った。


俺が顔をあげると…


小春ちゃんは
人差し指を合わせて
モジモジさせていた。


『直樹くん…
あたしをどんな女と思ってるん?』


『…え……?』


小春ちゃんは唇を尖らせて
上目遣いで俺を少し睨む。


『あたし…そんな破廉恥じゃないもん…』


消え入るように呟いて…

小春ちゃんは
そのままシュン、と
俯いてしまった。



しまった…

傷付けてしまった…?



『ご…ごめんな。』


なんだか猛烈に
俺が悪かった気がしてきた…


『あたしはただ…
フォークダンスのシーンを
撮りたかってんょ…』



『う…うん。…ごめん…。』


居たたまれなくて
情けなく、こめかみをかく俺…


謝るしか出来ない。


『ごめんな…。』


小春ちゃんは
ちらりと俺を見る。


『ほな…明日高校きてくれる?』


『え…高校?』


小春ちゃんはコクンと頷く。


『美術室でモデルして?』


美術室…かぁ。


少し考えて俺はOKした。


太一くんの家庭教も
明日は夜だけにしてもらうか…


小春ちゃんに
ぱぁっと笑顔が戻る。


俺は苦笑した。

『それでチャラにしてくれる?』


小春ちゃんは、こくこく頷く。


『うちこそ無理いうて
ゴメンね?』


『いいよ。』


俺も気分転換になるし…


小春ちゃんは
ウキウキした様子で
デジカメに手を伸ばした。


本当に小春ちゃんは…
なんか憎めないな


そう思っていると―…



『うきゃ―――ッ!!!!』


小春ちゃんが叫んだ。


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