オフィスの甘い罠
毒にも薬にもならない地味OL。


それが昼間の世界を
生きてくのには、一番
ラクなんだ。



そんなあたし《梓》が
《紫苑》ってゆー夜の顔を
持つようになったのは、
ほんの偶然だった。



今の会社に入ったばかりの
頃――仕事を終えて夜の
街を歩いてたら、知らない
声があたしを呼び止めた。



真後ろから声をかけたその
男は、振り返ったあたしが
華やかさのカケラもない
メガネ女だとわかると
明らかにガッカリした顔で、



『どうも!
銀座にあるAphroditeって
いう店なんだけど。

お店で働いてくれる素敵な
女のコを探してたんだけど
……キミはそーゆーのは、
興味ないよねぇ〜?

アハハ、ゴメンねぇ』
< 13 / 288 >

この作品をシェア

pagetop