オフィスの甘い罠
ママと同僚何人かと、
あたしびいきの客達と。



お客はあたしの為とか
言いながら高いお酒を
ガンガン入れてくれて、
高価なプレゼントも
たくさんもらった。



(たしかにあれは、
面白かったな)



別に『嬉しい』なんての
じゃないけど……そう、
おかしかったな。



今まで誰も――あたし
本人ですら何とも思って
なかったこの日を、
みんなが祝う。



それが《梓》の誕生日なら
誰も見向きもしないのに、
《紫苑》の誕生日って
だけでお祭り騒ぎ。



あたしを産んだ親ですら
忘れてるかもしれない
のに、あたしのことを何も
知らないヤツらが、知った
ような顔で笑って喜んでる……。




『こんなバカみたいな
光景も、悪くないわ』



去年の誕生日はそんな
ことを思いながら、店で
飲み明かしたんだった。
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