オフィスの甘い罠
スペアの鍵で、自分で鍵を
開けて副社長室に入った。



室内は電気もついてなくて
当然誰もいない。



ドアの所で一瞬立ち
止まったけど、すぐに
再び歩き出して柊弥の
デスクの前に立った。




「………バイバイ」




バッグから出した小さな
白い封筒を、そっと
デスクに置く。



さっき家で書いてきた、辞表。



封筒から手を離すと、
あたしはひとつだけ小さく
息をはき――。



そうして次の瞬間、振り
切るようにきびすを返すと
一歩を踏み出した。



それ以上振り返ることはない。




まっすぐ歩いて、あたしは
無言で副社長室を後にした。





     ☆☆☆☆☆



_
< 221 / 288 >

この作品をシェア

pagetop