オフィスの甘い罠
その感情は、危険。



知ってるはずよ、梓。



何かを求めることに意味
なんてないって。


求めれば、よけい悲しい
思いをすることになるだけ
だって。



あたしはそれを遥か昔に
学んで――そうして、
一人で生きてくって
決めたんだから。




あたしは薄暗い室内で、
壁の時計を確認した。



AM5:00。



出勤の用意を始めるには
相当早いけど、静かに
フトンを抜け出す。



シャワーを浴びて着替えを
して、他にも色々準備して
から――いつもより1時間
以上も早く家を出た。



こんな時間に会社に
行っても、きっとまだ
誰も来てないだろう。



柊弥だって、いない。




――でもそれでよかった。


むしろ、そのために早く
来たんだから。
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