オフィスの甘い罠
「アイツ――……!!」



“辞表”という文字が目に
飛び込んできた瞬間、
柊弥はわし掴みせんばかり
の勢いでそれを取る。



すぐに封を切って中を
見たが、綺麗な筆跡で
お決まりの辞職の申し出が
書いているだけだった。



「なんで――…!!」



こんな文章から何が
わかるというのか。


――何もわかりなどしない。



アイツの心の中は見えない。



(なんで……さらけ出さ
ねーんだ?

何も言わずにいなくなって
――それで何が変わるっ
てんだよ!?)





ただ、変えてやりたかった。


それだけなのに。



初めて会ったあの夜、
死にそうなくらいつまらな
そうで寂しそうな顔をしていた。



人形のような笑顔とみせ
かけの楽しさでごまかして
いたけれど、自分には
それがわかった。
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