オフィスの甘い罠
一緒に出てきてた店の
同僚が聞いてくる。


杏奈っていうのはここでの
源氏名だ。



それを聞いたるりちゃんは
楽しそうにニヤニヤと笑って、



「へぇ……杏奈、ねぇ。

マジ衝撃。

まさか梓ちゃんが、こんな
仕事してたなんて」



「ゴ、ゴメン、先行ってて
くれる?

すぐに戻るから」



あたしはとりあえず同僚に
立ち去ってもらうために
そう言った。


こんなところ、見られたくない。



「うん、わかったわ」



彼女が店の中に消えたのを
見届けて顔を戻すと、るり
ちゃんは一緒にいた集団を
離れた所で待たせて、すぐ
傍まで歩み寄って来てる。


そして間近で、舐める
ようにあたしの全身を見回して、



「何年ぶりかなぁ。

見違えたねー、梓ちゃん」



「るりちゃん……」
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