オフィスの甘い罠
消え入りそうな返事に
課長は怪訝な顔になってた。



だけどそれよりも数百倍、
話の流れでこっちに向いた
新たな視線の方が痛い。




――柊弥が……

あたしを、見てる……。




「……………」



一瞬の間が、あたしには
すごく長い沈黙が流れた
ように思えた。



視界の隅に映る柊弥を
伺いながらビクビクしてる
あたし。



そんなあたしを見て、
柊弥は――…。



「香川さん……ですか?

お手数かけますけど、よろしく」



軽く笑ってサラリと
言うと、すぐにあたし
からは目をそらした。



そして今はもう、ごく
普通の顔で佐々木課長と
『これからよろしく』
なんて会話してる。



何事もなかったかのように
平然とした態度で……。
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