大好きな君にエールを*番外編
滅多にお菓子作りはしない。だから久々でちょっぴりドキドキした。お姉ちゃんと作るのは、ガトーショコラにした。
そして、オーブンに入れて待っていたとき、お姉ちゃんから聞かれた。
「ねぇ、麻帆」
「ん?」
「荒ちゃんには?」
あ、やっぱり聞くんだね?
「帰ってきてからあげようと思って」
実は毎年、あたしと荒ちゃんにバレンタインチョコを渡したことは……ない。理由は、荒ちゃんがいないことと……あたしがお菓子作りがヘタだから。
下手でもいいと思う。それに、送るっていう手もあると思う。そしたら、荒ちゃんも喜んでくれると思う。
でも、恥ずかしかった。周りの子は一生懸命に手作りをしているのに、あたしは……出来なかった。
だけど、今年は頑張ってみようと思った。荒ちゃんには帰ってきてから、手渡しで渡したいと思った。
あと、友達や後輩……お世話になった人に気持ちを贈りたいと思ったの。
「本命は後回しって事ね」
「それ、悪く聞こえちゃう」
「でもいいんじゃない?」