大好きな君にエールを*番外編





みんなで笑い合っている時、まだ卒業したくないなって思えた。


ずっと、この仲間たちと汗臭い防具を身にまとい、汗水流して竹刀を振っていたいと思った。


当たり前のように思っていた時間は、あっという間に過ぎていった。


ホームルームが終わればダッシュで部室へ向かい、制服を脱ぎ捨てて注意された時もあった。


準備に手間取い、練習時間に遅れが出た時もあった。


練習がうまくいかなくて、誰にも見つからないように隠れて泣くこともあった。


それでも、剣道部でいたかった。


練習が終わって、お疲れさまー!って集団でコンビニにアイスを買いに行ったこと。


適うわけもないのに、チャリ集団とダッシュで競ったこと。


バカみたいに、でも、誰よりも真っ直ぐだったあたし達。



先輩の姿に憧れたあの頃もあった。


同輩と喧嘩したあの頃もあった。


後輩に背中を押されたあの頃もあった。



全部、今のあたしたちがいる糧(かて)なんだ。


「絢子、卒業したくないね」


自然と出てしまった本音。


「そんなこといっても、目の前に卒業はあるんだよ」


少し寂しそうな笑顔であたしを見た絢子だった。





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