コスモス
「…ごめん…」
「もういいから」
必死にその一言だけを絞り出し、その手に力を入れる。
…返事の変わりに、明日可の手に少しだけ力が入った気がした。
…寝静まった家に戻り、そっと玄関を開ける。
部屋に帰った僕は、父さんの書斎から盗み出したタバコに火を付けた。
床に座ったまま、その煙を吸い込む。
慣れない煙が肺にまとわりつき、僕は思わずむせ返った。
咳き込みながら、ふと頭に今日の明日可がよぎる。
…明日可の苦しみは、こんなもんじゃない。
タバコを持つ指に力が入る。
…俺は最低だ。
逃げ場にしてるだとか言いながら、俺は何もわかっちゃいない。
明日可の苦しみを、これっぽっちもわかってやれない。
かっこつけて、俺は苦しいんだって周りにアピールしてるくせに、明日可の苦しみの前では、ただのふぬけた奴になる。
俺は最低だ。
俺は最低だ。
ぐっと下唇を噛み、僕は持っていたタバコを、思い切り腕に押し付けた。
…目の前が赤く染まり、思わず目を瞑った。