コスモス


……………


眠る明日可に、そっと毛布をかける。

ためらいながら、髪の毛に触れ、その柔らかさを確認した。

ゆっくりと明日可に近付き、
細く柔らかい髪に口づける。


…唇を離した僕は、そのまま病院を後にした。














…満月が僕の通る道を照らし、僕は無心にペダルを漕ぐ。

ブレーキを知らない速度で、自転車はあの場所へと向かう。

その場所に着いた僕は、ブレーキをかけずに自転車から飛び降りた。

バランスを崩した自転車は夜道に倒れ、僕も反動で地面に叩きつけられる。


…カラカラと車輪の音が響く中で、コンクリートに仰向けになった僕を満月が優しく見下ろしていた。



「…っ…」










…満開だった。


コスモスは、溢れんばかりに満開だった。



「…うっ…!」



僕は腕で目を覆う。


泣き声は、コスモス畑に響き渡った。


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