コスモス

「…優しくなんかしないで。どうせ…」

今までに聞いたことのない、秋桜のか細い声。



「どうせ修平は、アスカのところに帰っちゃうんでしょ…」





…何も、言えなかった。


明日可の名前が出ただけで、僕の全神経は停止してしまう。
全てを明日可に奪われてしまう。

…秋桜の気持ちも知らないで。




沈黙が続いた後、先に口を開いたのは秋桜だった。


「…帰って」

何も言えない僕は、停止した思考のままでふらりと立ち上がった。
入り口のところで、秋桜の声が背中に届く。


「…修平は、あたしにキスしたかった?」



…僕はその問いにすらも、答えることができなかった。

明日可の名前だけが、頭の中にクリアに鮮明に浮かんでいた。

























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