コスモス
……………
明日可にメールを送ってから、既に2時間がたった。
携帯の画面が9時を示す。
…明日可は、来ないかもしれない。
それでも僕には、伝えなきゃいけないことがある。
今まで僕が、逃げてきたこと。
本気で明日可と、ぶつかり合うこと。
伸びきった雑草が、コスモス畑の中で揺れる。
軽く、深呼吸をする。
…暗闇の向こうから、ふいに聞き慣れた足音がした。
目を凝らしてその先を見つめる。
暗闇の向こうからゆっくりと歩いて来る明日可が、そこにはいた。
明日可と目が合うと、僕はふいに目線をそらす。
まるで、出会った頃のように。
明日可は、僕の隣に腰をおろした。
今日の朝と同じ距離。
2人の間を夜風がすり抜ける。
「…何?」
明日可が呟く。
僕を刺す様な冷たい声。
胸が痛む。
「…寒くない?」
僕は、自分の着ていたパーカーを明日可の肩にかけようとした。
あの、初めてキスした日の様に。
「っ…やめてよっ!」
明日可は思い切り僕の手を払い、立ち上がった。
パーカーが、カシャンと音を立ててコンクリートの上に落ちる。
振り払われた手が、ジンと痛んだ。