らっく!!
人間は汚い。
人より多くのものを持っているだけで誹謗、中傷、嫉妬…そして。
無理やりでも奪おうとする。
美弦…気がついてる…?
あんたも人が欲しいと思うものを持ってるのよ…?
私みたいな一般人にしてみれば美弦も高屋先輩も多少の道筋が違うだけで他の金持ちと大差ない。
美弦が高梨家の人間だとわかったら、それを利用しようとする人間が必ず現れだろう。
その時あんたは耐えられるの…?
見ず知らずの人間から罵倒され、利用され、挙げ句の果てには裏切られる。
どうして人は人を羨まずにはいられないんだろう…?
その問いに誰も答えてはくれなかった―…。
私はコートのポケットに無造作に手を突っ込んだ。
そして高梨家に背を向け再び歩き始める。
高屋先輩みたいな人がそばにいる限り大丈夫…か…。
あの人の美弦に対する愛情は本物だ。
私にだって分かるくらいなんだから紘一さんなんて肌で感じているに違いない。
だからあんな行動にでたのだろう。
馬鹿よね…寂しいからって…。
いつか日か高屋先輩のもとに行く美弦を想像しながら、あの人も苦悩している。
頑張ってね…。
まだ先のことだろうけど、紘一さんの説得は大変そうよ?
心の中でエールを贈ると私は駅までの道筋を急ぎ始めた。