らっく!!



この間のことがあってからあんまり強く拒否できなくなった。


傷つけてしまいそうで…。


弱ってる様子が居たたまれなくて、思わずしてしまった約束。


紘一さんが聞いたら軽はずみだって怒りそうだけど、こうでもしないとそのまま手の届かないところに行ってしまうんじゃないかってあの時は不安になった。


私にできることっていったらそばにいてあげることくらいしかないから。


こうしていても背中から愁の寂しさが伝わってくる。


人恋しいんだよね…。


そう思うと尚更突き放せない。


野菜をとるために手を前に伸ばす。


そしてふとリビングに目を落とした。


「愁ー?」


「んー?」


「携帯鳴ってない…?」


先ほどから愁の携帯のランプがチカチカと光っている。


「…こういう日にかけるほうが悪い」


「だめっ!!ほらっでてっ!!」


まるで気にしない愁にこれ幸いにと口を尖らせる。


「わかったよ…」


愁は観念して携帯をとると通話を開始した。


やっと解放されホッと一安心。


これで無事に過ごせそう…。


少なくとも味の保証はできる。


さっきから調味料を間違えてそうになってたのは私の手際の悪さのせいじゃなく、愁が後ろにいたせいにしておこう。


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