らっく!!

Be With You



「愁、行くぞ」


兄貴は秘書からチケットを受け取りながら俺を呼んだ。


「わかりました」


人混みをくぐり抜け、搭乗口を目指す。


電光掲示板には俺が乗る予定のニューヨーク行きの飛行機が搭乗を案内されていた。


今から兄貴とアメリカに渡る。


実感はない。


一度日本を発ったらそう簡単には戻ってこられない。


それなのに俺の心には郷愁なんて微塵もなかった。


俺が選んだ道だ。


ただ―…。


「馬鹿だよな…」


未練がましく後ろを振り返ることをやめられない。


来ないとわかっていてもついつい探してしまう。


「早くしろ」


兄貴は再び俺を呼んだ。


さっきからこの2ヶ月の間に起こった様々な出来事が浮かんでは消えていく。


俺に示された道はひどく残酷だった。


< 379 / 390 >

この作品をシェア

pagetop