らっく!!
時刻もすっかり夕暮れ時になり、大原さんは我が家から帰るときになった。
「最後に1つだけ聞いていい…?」
玄関まで見送りに来たはいいものの、事情をすべて話したせいか大原さんは許容範囲を超える情報得て疲れているように思えた。
「なんで紘一さんを威嚇してたの…?」
紘一さんって人当たりもいいし…初対面の人に嫌われるはずないと思う。
「あんたがいつまでもはっきりしないから…」
はあっと大原さんは大きなため息をついた。
「私はてっきり…変なオヤジにでも飼われてるのかと」
正しいような正しくないような…。
オジサンの定義が何歳からなのかということにもよるけど…。
「まあ、あんたも苦労してるのね」
頭をポンっと叩かれる。
「またね」
その日…最後に見た大原さんの笑顔は教室では見たことないくらい穏やかなもので…、
私はこの時、漸く気がついたのだった。
大原さんは私がおかしなことに巻き込まれていないか確かめに来てくれたのではないかと…。
それは言葉にはされなかったけど、大原さんなりの気遣いの形で現れていた。
きっと彼女は私の秘密を他の人には言わないだろう。
改めて思うと、私は紘一さん待つ家の中へと戻っていった―…。