真実の糸
ホテル内中庭


「稲葉さん!稲葉さん!キッきみくん!!」


私がきみくんと呼ぶときみくんは、止まってくれた。


「きみくん、どうしたの?急に会場飛び出して、翔さんも、心配するよ?」


と私がきみくんに話しかけてもきみくんは、答えてくれない。


「ねぇ、きみくん!きみくんったら!」


「おまえが!!おまえが、悲しそうな顔をしてたから……。」


と罰の悪そうな顔をした。


そっか、きみくんは、幼馴染みの私の表情の変化に気づいて、気を使ってくれたんだ。


「ありがとう、きみくん。でも、大丈夫だよ、私。夫婦になったらこんなことで、挫けてらんないもん。」


そう、私は、翔さんと夫婦になるだ。

きみくんへの思いを封印して。


だから、きみくん。
あんまり、私に優しくしないで、決意が揺らいじゃうから。


きみくんへの思いが溢れちゃうから。


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