ミモザの呼ぶ声
 奴は次から次へと、最小限の休憩しかとらず、サクサクと進めている。
 あの乾きの速さは並みじゃない、そうか、あの粘度は……速乾剤を絵の具に混ぜたのか! むしろ速乾剤に絵の具を混ぜたような感じだ。畜生! 
 あの白いチューブの山! どんだけ買い占めてんだよこの野郎! 周りの奴らも白けてる。
 やられた! 奴め、金にあかしやがって。今日中に仕上げに入るつもりだ!
 一方でオレはついに手を離せないところまで来ていた。仕上げに手は抜けない! 負けられないんだ。奴にだけは……
 だから、オレは周到になって実技後になってから、わざわざアトリエに戻って、様子を見、そのままになっていた、奴の絵をイーゼルを束ねたその真ん中へと挟み込んでやった。
 やったのはどうせオレだってわかるハズだから……ちっとばかし派手にやってやる。
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