17歳の不良と6歳の殺し屋
「ぎゃあ!」

獣の鳴き声の様な声を出して男が吹っ飛んだ。

「な、なんだよ…この女…!!」

震えた男の声に私は無表情で懐へ入り内臓を抉るように拳を練り込ませた。

「うげぇッ…!!」

男は胃液を吐き出して、そのまま前に膝を付いて崩れた。
私の表情は変る事はない。


10年前のあの日からずっと…




私は余り恵まれた環境でない所に生まれた。
お金とかそういう問題ではなく。
両親が余りにいい加減な奴らだった。
母は娼婦で男は詐欺師。まるで漫画のようだろうと思えるが二人に純粋な愛の気持ちはない。軽はずみで私は生まれたのだ。まるで抱えていた幾つ物のボールを誤って一つ落としてしまったように。


私が生きてこられたのは、勿論この二人の親のお陰なはずがない。
私は、母親の弟によく世話になっていた。
荒っぽい性格だったが、本当にいい人だった。

彼はスポーツが好きで、格闘技なんかはマニア的だと言っても過言ではない。
空手で何度か大きな大会に優勝し、剣道の稽古までやっていた。柔道や合気道までお手の物だ。
私は彼の二カッとした全快の笑顔が何より好きだった。

私は、彼に気に入られる為に必死になって武道を学んだ。
私が一つ技を覚える事で、彼の笑顔もまた増えていった。それがただただ純粋に嬉しかった。
彼は、以外にも礼儀には厳しく、だからこそ私もあんな環境の中で変に曲がる事もなく、日々充実した生活が送れた。
私は毎日、毎日、夜遅くまで特訓に励んだ。
どんなに遅くに帰ろうと、誰も心配する人はいなく、何も買ってもらえなかった私には趣味などもなくただ、体を鍛えるだけが私の時間潰しだった。
どんどん自分の体が堅く筋肉がついて来ると、私と彼は歓喜したのだが彼は途中から苦笑いをするようになった。

それは私にとってあまり気持ちの良いものではなく、少し寂しい気持ちになった。
原因は簡単な事だった。自分が女だという事だ。
女があまりガッシリとした体格になる事は将来私が嫌な思いをするのではないかと彼は心配してくれていたらしい。
そんな優しい彼に涙が出そうになった。
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