*恋の味[上]*【完】

お父さん



行く宛てもない私は、病院を出た。

とぼとぼと家に向かいながら歩いていた。

「お姉ちゃんだ!」

?あっ、しほちゃんだ。

髪の毛を2つにくくって、幼稚園の制服を着ているしほちゃんと、しほちゃんママがいた。

「あら、先日は本当にありがとうございました」

深々と頭をさげるしほちゃんママ。

「あ、顔あげてください。礼をいわれるほどの者ではないんで」

うん、今の私は礼を言ってもらえれるような人間じゃない。

「お姉ちゃん悲しいの?しほがいいこと教えてあげる!」

いいこと…かぁ。

「笑うの!」

「……っ?!」

懐かしい。昔、近所で仲良かかった友達にいわれたな。

罰悪そうな顔をしといたら、「まーちゃん笑って!笑ったら楽しいよ!」って。

「しほね、お姉ちゃんが笑ってくれたらいいの!だって、しほが助けれたんだもん!しほ、お医者さんになるから笑顔じゃないとダメなんだよ!」

満面の笑みで言うしほちゃんに救われた。

そんな気がした。

「ありがとう」

「えへへー」

子供のパワーって凄いな。

私も、お母さんやお父さんを癒すことができてたかな?


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