あんな。めっちゃ、だいすきです。



ぴーんこーん。



玄関のしかくいチャイムを押したら、固そうな古そうな音が鳴った。


ぴーんぽーん、やなくて、ぴーんこーん、やねん。

何回聞いても、何十回聞いても、そう聞こえる。


…ウチの、実家のチャイム。



「いらっしゃーいっ!!」



よそゆきの声でドアから出てったのは、ちょっとキレイに化粧したウチのおかあさん。


でもすぐに、おかあさんの顔からスマイルが消える。



「……いっちゃんはどしたん?」

「…どしたんって」

「途中に捨ててきたんか」

「…なんでそーなんの。てゆーか、連れてこんって電話でゆうたやんか!」



…実家に久しぶりに帰ってきた娘にちょっとは目を向けてぇな、おかあさん。



そう。今日から3日間くらい、実家に帰ることになった。


来週から最後の看護実習が始まって忙しくなってまうから、その前にって。


ついでに彼氏も連れてきぃ!って電話でおかあさんから言われててんけど。


やけに白いおかあさんの顔チラ見して、ため息つく。


< 64 / 389 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop