先輩と私。
◎ 裏庭にて
「はー…」
私の名前は、山本桜(ヤマモト サクラ)。
どこにでもいそうな、普通の名前。
名前の由来だって、春に生まれたからって…。
この季節になると、この名前のことで憂鬱になってくるんだ。
なんでかは分からないけどさぁ…。
「はぁ…」
私はもう一度ため息をつきながら、そこにしゃがみこんだ。
ココは私のお気に入りの場所なんだ。
誰にも邪魔されなくて、1人っきりになれる。
中等部と高等部の間にある、共通の裏庭。
目の前にある大きな桜の木を眺めながら、私は持ってきたお弁当を広げる。
友達がいないからこんなことしてるわけじゃないよ?
でもさ、お昼ご飯ぐらいは1人でのんびり食べたいって…、昔からそうでさぁ。
しかも何故か、自分の大嫌いな桜の木の前で。
お花見? 違う。
ただ、なんとなく。
「ふぁ…」
まわりに誰もいないのを確認すると、
大きく口を開いてあくびをした。
“春”って季節は嫌い…。
だけど天気は良いし暖かいし。
このまま寝ちゃいたいぐらいだ…。