先輩と私。
「…あ、俺のことは遠藤先輩じゃなくて、もう拓って呼んで?」
「いいんですか?」
「いいよ。 だってこれから、付き合うことになるんだし?」
“付き合うことになる”…。
嬉しさ、幸せが現実になる瞬間。
「でも、呼び捨てなんてできないですっ。 じゃあ…拓先輩ってよんでもいいですか?」
「おう。 分かった」
こうして私と先輩…、拓は両思いってコトが分かった。
私はすぐにミサにメールを入れた。
《先輩と私、両思いだったみたい♪》
ミサからはすぐに、
《おめでとう! 頑張るんだよ!》
のメール。
…なんか現実味がないなぁ。
ウソみたいなんだもん。
まだ、大好きな先輩、拓先輩と付き合えてるってコトが。
「じゃあ俺、バイト中に急いで抜け出してきたから…、そろそろ戻るわ」
「はいっ。」
「じゃ、また学校で」
「はい!」
まだまだなれないことが続きそうだけど、大丈夫。
帰り際、拓先輩は私の手のひらに小さな紙切れを包ませた。
拓先輩がいなくなってから、私は1人でそれを開くと、
先輩の携帯のアドレスと番号がかかれてあった。
…そっか、まだ私、アドレスも番号も何も知らなかったんだ。
桜の花びらが散る季節、春。
私の大嫌いだった季節は、
私と、大好きな先輩との大切な記念日になった。