あの日のキスを、きみに。
*05:不意打ちのキス

「私のこと、好き?」

「……は?」


ある、昼下がり。
並んでソファーに腰掛けていた彼に向け、何ともなしに問いかければ、彼は意図を掴めぬ様子で私の方に視線を向けた。

必然的に絡む、視線。
数秒見つめ合った後、余りにも間抜けな彼の表情に、思わず笑みが零れる。


「……いや、笑う意味わかんねぇし。」

「ごめんごめん。すっごい、間抜け面だったから。」

「ひでぇ。」


確かに、そうかも。
いきなり変な質問をしたのは私だし、笑ってしまったのは悪かった。


「ふふっ、ごめんなさい。」


だから彼の肩に触れ、微かに笑いながら謝れば、彼も小さく苦笑を零した。

そして刹那、


「…――にしてもお前、言葉で言わなきゃわかんねぇの?」


そう呟かれたのと同時に重ねられた唇。余りにも不意打ちすぎるキスに、一瞬驚いたけれど。

それが彼の、私の問いに対する答えなのだと気づき、私はただ受け入れた。





  不意打ちのキス


  ( 聞かなくたって )
  ( 気持ちはわかっていたけれど、 )
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