彼の失敗は言えなかったこと

狭いベッドに移っても、まだ胸に居場所をくれる。
今はもう……。


「骨折の時に神経痛めてな。まぁ、繋げるのはそう難しくはなかった。でも、全く動いてくれなくてな。ちなみに動かせないかもって言われたのは、事故の翌朝な」


「神経は繋がったんだ」

「あぁ。ただ、リハビリと手術を繰り返しても、言われた通り動いてくれそうにないんだな、これが」


笑いながら話してはいるが、内心疲れているのだろう。


「たぶん、動かない訳じゃない。きっと数をこなしていけば―― 」

「航は一人で頑張りすぎだよ」


別れてからは、ずっと一人だったんだ。

期待しながらリハビリをして、動かない右腕に落胆して。
左腕で家事をして、生活する為に知恵をつけて。


「また、住み込みでお世話、していい?」

「ん?」

「家事とかお風呂はどうするの?」

「……お願いします」

「任せなさい」


償い、という訳ではない。

ただ、一人で頑張り過ぎた、このバカのそばに居たいだけ。

なにがあっても許さないんだから。


「馬鹿げている身勝手な律義さを発揮した、チェリー君には、私の望みを叶えてもらおうかな」


「ゔっ、マジすか……」

「約束、優しく破ってね。私も初めてだから」


「おぉ、大事にするっす……」



右手が治ったら、なんて待てないもん。


これ以上私にお預けさせたら許さないよ?

ね、航。



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