EGOISTE

鬼頭は目を開けて、ちょっとの間まばたきを繰り返した。


やがて、


「はぁ?」


と思い切り表情を歪めて口を開いた。


「お、お前が元気ないからっ!そりゃ水月の代わりになんてなれないけど、ちょっとでも元気でるかと思って言ったんだぞ」


慌てて言う俺に鬼頭はちょっとの間、また目をまばたかせた。


何かを考えるようにしてじっと俺を見ていたが、ふいと視線を外す。




「やだよ。暑いもん」


「あ、そ」


俺は行き場の無くなった手を乱暴にポケットにねじ込んだ。


ん?


でも待てよ……


暑くなかったら繋ぐってことか?


もう一度立ち止まってちらりと振り返ると、鬼頭は下を向いてとぼとぼとこちらに歩いてくる。


わっかんねぇな……


猫みたいだ。


でも知ってるか?


猫が視線を逸らすときは、敬愛を示してるときだって。


代わりにじっと見つめてくるときは警戒してるときだってことを。


俺の差し出した手を鬼頭は鬼頭のやり方で、上手に交わしたってことだな……









「誠人!」



ふいに声がして俺と鬼頭はほぼ同時に振り返った。







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