EGOISTE
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「あんのくそ女!」
俺は勢い良くビールの缶をダイニングテーブルに叩き付けた。
5年前とちっとも変わってねぇ!
……ところで。
「ちょっと、テーブルに当たらないでよ。あんまり興奮すると鼻血でるよ」
俺は目の前の鬼頭をちょっと睨んだ。
何でこいつがここにいる?
ここは俺のマンションだ。
「何でお前がここにいるんだ?」
「だって水月が、林先生が心配だからついててやってくれって言った」
鬼頭は無表情でさらりと答えた。
こいつが喜怒哀楽に乏しいのは分かってたことだが、全く感情が読めん。
それに心配っても。
もう5年経ってる。
あの頃の苦い思い出は記憶の片隅にすっかり追いやられていた。
……筈だった。