EGOISTE


重苦しい沈黙が舞い降りてきた。


どちらも口を開くことなく、黙々とタバコを吹かす。


やがて水月がテーブルに肘をつくと、やや疲れた顔付きで額を押さえた。




「雅は……何でまこを頼ったりしたんだろう。僕に相談してくれれば良かったのに」




俺は顔を上げた。


ようやく分かった。


水月が苛立っていた理由…


妊娠したかもしれないことを、当人の彼氏に相談せず、俺に頼ってきたことが…気に食わなかったのだ。


「や。俺も別に鬼頭から相談されたわけじゃねぇよ。ただ、ちょっと気になって問い詰めたんだ。そしたら疑いがあるってことで…」


「でも!その後でも僕に言ってくれれば良かったじゃないか!何で…何でまこに……」


びっくりした。


水月がこんな風に声を荒げて大声を出したを初めて聞いたから。


だがしかし、最後の方の言葉は弱々しく声が掠れていた。


「鬼頭は……お前に知られたくなかったんだと。お前が離れていっちまうかもって思ったわけだよ」


何故か鬼頭の気持ちを弁解するように俺は早口に言った。


「僕がそんなことで彼女を嫌うと?」


驚いたことに水月はほんのちょっと笑った。



だがその笑顔は自嘲という名のものだった。


「水月……」





「馬鹿にしないでくれっ!!」





ドン!


テーブルを叩く音がして、水月が声を荒げた。


まばらに居たその場の客たちが何事かこちらに目を向ける。







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