EGOISTE

マンションに帰って、鬼頭の様子を見に部屋を覗くと、鬼頭は心地良さそうに寝息を立ててぐっすり眠っていた。


緊張の糸が切れてしまったのだろう。


疲れを伴った体に一番必要なのは、どうやら睡眠だったらしい。


俺は部屋を出ると、リビングのソファに脚を投げ出し横になった。


本来なら鬼頭の隣で、一緒に眠るのに…


そうしなかったのは、俺があいつに気があるとか、あいつを生徒以上に見てるとか、そんな理由じゃない。


もうこれ以上……


水月の悲しむ顔を見たくなかったから。


理由は至極簡単なことだ。


でも……


「うまくいかねぇな」


ぽつりと漏らし、両手を頭の下に入れる。


一向に治まらない胃の痛みを抱えながら、俺は狭いソファの上で目を閉じた。








< 135 / 355 >

この作品をシェア

pagetop