EGOISTE




千……夏――――




俺はガバッと身を起こすと、フロントガラスに張り付いた。


「ちょっと。どうしたのよ」


俺の行動を不審そうにしながら歌南が見あげてくる。






「……なん……で………」






歩道橋の上の千夏の表情はここからじゃはっきりと見えない。


でも見間違いじゃない。


あれは千夏だ。


歩道橋の手すりに手をついてこちらをじっと見つめている。


「千夏!」


俺は慌てて車を降りると、狭い路地裏を走った。


胃の痛みが一足遅く、俺を追いかけるようにせりあがってくる。


ビルとビルの間、それが途切れると広い歩道になった。


俺はその歩道に突っ立って、歩道橋を見上げた。


薄緑色をした歩道橋の手すりに手をついて千夏が俺を見下ろしている。


間違いない。千夏だった―――





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