EGOISTE
キリキリ……
しばらく落ち着いていた胃の痛みがまたも復活する。
いや、最初から落ち着いてなんかいない。
薬で無理やり抑え込んでいただけなのだ。
そう言えば、薬……飲み忘れたな…。
飲まなきゃ…と思っても、起き上がることすら億劫で俺はだらりと手をソファから垂らした。
垂らした指先が水月の髪に触れる。
柔らかい薄茶の髪。
色こそ違えど―――本質はやっぱり姉弟。
髪の細さや感触はやっぱり似ている。
不思議だな……
歌南の髪の感触なんて当に忘れてるかと思ったのに、こんなにもはっきりと思い出せる。
色んなことを―――
忘れたかった。
母親のこと。歌南との過去。千夏との思い出……
鬼頭とのキス―――
俺の記憶の中から
消し去りたい。
不可能なことなのに、俺は願わずにはいられなかった。