EGOISTE


「姉さんもどう言うつもりだろ。


離婚なんて―――」



俺は近くにあるクッションを手繰り寄せた。


「どうせ歌南の、はったりだろ?」



――ソノ気モ無イクセニ



「俺をおちょくって楽しんでるんだ」



――ソウ…俺ハイツダッテアイツノオモチャ



「マジで勘弁」



――飽キタラ捨テル 都合ノイイオモチャダ



クッションを顔の前で抱きしめると水月の香りがした。


ほのかな石鹸の香り。






―――欲シイナ





柔軟剤何使ってるんだろ。





『ごめんね。誠人。ごめんね』


20年前の母親の言葉。


『まだ……怒ってるの?』


俺を苦しめるだけの憎い女の声。歌南……








『さようなら』







一生……手放したくなかった愛しい―――千夏。





チクン…



あぁ、また胃の痛みが復活しやがった……






―――俺ヲ捨テナイモノが欲シイナ









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