EGOISTE
俺はクッションを軽く持ち上げると、顔から離した。
水月の香りが遠ざかる。
ちょっと足元を見やると、水月が屈んで床に転がった雑誌を手に取るところだった。
白地にブルーの線が入ったチェックのシャツと同じぐらい、まっさらで穢れのない首元が露になっている。
ほっせぇ首……
女みてぇ
――欲シイナ
俺ヲ捨テナイモノ……
何気なく考えている言葉と、俺の奥深くに眠る黒く歪んだ思考が交差する。
それに伴って痛みが、まるで俺を咎めるようにチクチクと胃を刺激する。
俺はゆっくりと上体を起こすと、水月に手を伸ばした。
俺は何を考えてる?
相手は親友でもあり、同僚でもあり―――男だ……
――ソレガドウシタ?
手の先が水月の首に触れるか触れないかぐらいのとき、唐突に水月が振り返った。
「ん?どした?」
無防備なその笑顔を見て、
俺の手は引っ込むどころか、
水月の腕を乱暴に掴んでいた―――