EGOISTE



俺はクッションを軽く持ち上げると、顔から離した。


水月の香りが遠ざかる。


ちょっと足元を見やると、水月が屈んで床に転がった雑誌を手に取るところだった。


白地にブルーの線が入ったチェックのシャツと同じぐらい、まっさらで穢れのない首元が露になっている。


ほっせぇ首……


女みてぇ





――欲シイナ


  俺ヲ捨テナイモノ……




何気なく考えている言葉と、俺の奥深くに眠る黒く歪んだ思考が交差する。



それに伴って痛みが、まるで俺を咎めるようにチクチクと胃を刺激する。




俺はゆっくりと上体を起こすと、水月に手を伸ばした。





俺は何を考えてる?




相手は親友でもあり、同僚でもあり―――男だ……





――ソレガドウシタ?





手の先が水月の首に触れるか触れないかぐらいのとき、唐突に水月が振り返った。


「ん?どした?」


無防備なその笑顔を見て、



俺の手は引っ込むどころか、





水月の腕を乱暴に掴んでいた―――







< 214 / 355 >

この作品をシェア

pagetop