EGOISTE
朝顔の花言葉は“愛情の絆、結束”だったかな……確か…
しおりをじっくりと見ると、きちんとラミネートされていて丁寧に作ってあった。
几帳面な高田さんの性格がうかがい知れる。
「ありがとう…」
これを機に、本を読むのもいいかもしれない。
思い切り泣けるヤツ…どうせなら、恋愛物がいいな。
シェイクスピア…なんてどうかな?
いや、あれは悲劇ばかりだ。どうせならハッピーエンドがいい。
朝顔のしおりを見て、ふっと思い出した。
そう言えば鬼頭が俺の部屋で源氏物語を読んでいた。
じっくり読んだことはないし、内容もはっきり知らないが、源氏物語の中で“朝顔”って女が出てきた気がする。
鬼頭が来たら聞いてみるか…なんて思っていると、
「先生~、来てあげたよ」
と相変わらずの淡々とした声が聞こえ、俺たちは揃って入り口に目を向けた。
「お客さん?」
鬼頭は高田さんを見ると、意味深に目を細めた。
「先生の病院で看護師をしてます。あなた…以前に会ったわよね…確か、喫茶店で…」
「ああ、あのときの…」
鬼頭も合点がいったように目をぱちぱちさせた。
「じゃぁ私はこれで失礼します」
高田さんは穏やかに微笑んで、席を立った。
「どうもありがとうございます」俺もぺこりと頭を下げる。
「いいえ。可愛い彼女ですね」
高田さんは悪意のない笑顔でちょっと俺に耳打ちした。
「………勘弁してください」