EGOISTE


「鬼頭」


俺は鬼頭を見上げて、ちょいちょいと手を振った。


「何よ」と言いながらも、こいつは俺に顔を近づける。


俺は横たわったまま、鬼頭に腕を伸ばすと彼女を抱きしめた。


「キャーーー!!」


鬼頭が俺の腕の中で固まる。


「何してるんだよ!」水月が怒鳴り、バチン!俺は盛大に鬼頭の平手打ちを喰らった。


叩かれた頬を撫でながらも、俺はちょっと頬を緩めた。


「……夢…じゃないみてぇだな」


「永遠に夢を見させてあげようか?」


と水月が笑いながら、手の関節をポキポキ鳴らす。


笑っているけど、笑っていない。


こ、怖えぇ。


「え、遠慮します」丁重にお断りして、俺はごろりと寝返りを打ち、天井を見上げた。


見慣れたはずの白い天井だ。





「………戻って…きた?」





何て表現するべきか悩んだけど、戻ってきたって言うのが一番合ってる気がする。


「何言ってんの?寝すぎで頭イカレちゃった?」と鬼頭。


「んなわけあるか」


鬼頭を見上げようとして、俺は右手の中に何かがあることに気付いた。




それは楠に渡したはずの





王将の駒だった。





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