EGOISTE



「なん……で、これあいつにやったはずなのに…。じゃぁあれは


現実―――?」



俺は唇をそっと押さえた。


楠が帰って…そしてその後歌南が……


そうだ!歌南!!


俺はがばっと起き上がった。


「ど、どうしたのさ」


水月が訝しそうに俺を見る。


「水月、お前歌南にこの病院のこと話したか?」


「え?ううん、言ってないよ!まこが入院してるって知ってたら、また押しかけてくるだろうから」


水月はぶんぶん首を振る。


「…だよなぁ。じゃ、やっぱあれは夢?」


何気なくサイドテーブルに視線を置いて、俺は固まった。







黄色い薔薇が一輪に……Maelboro。







五年前の……




あの日の記憶が鮮明に甦る。







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