EGOISTE


25歳の誕生日を盛大に祝おうと言って、俺は店を予約するつもりだったが、千夏が「誠人の家で二人きりがいい」なんて♪言ってた。


だから俺は彼女の好きなご馳走を作って、プレゼントの花束を用意するため、近くの花屋に来ていた。


昔の彼女にも赤い薔薇の花束を贈って、いい思い出がなかったけれど、やっぱり女は花束が好きだろう。


色はやっぱり“愛情”や“情熱”などの花言葉を持つ赤がいいだろう。


間違っても黄色い薔薇なんて選んではいけない。


「赤い薔薇の花を25本」


店員に作ってもらってる最中、





「あら。若先生?」と背後から声を掛けられた。





振り向くと、高田さんが立っていた。


俺は驚いて目を開いた。


「高田さん。お久しぶりです……」声を掛けて、俺はぎょっと目を剥いた。


高田さんの横に、小さな男の子…たぶん幼稚園年中ぐらいだろう。子供と手を繋ぎ、その反対側にはいかにも誠実で優しそうな男が一人居たからだ。


「あ、主人と子供です」


「えっ!あぁ。高田さんにはお世話になってます」


慌てて頭を下げると、「こちらこそ智香子(チカコ)がお世話になってます」と亭主も頭を下げた。


人の良さそうな感じのいい挨拶だ。


「高田さん、こんなにでかい子が居たの?って言うか結婚してたんですね」


「ええ。今年四歳になるんです」高田さんはほがらかに笑った。


「へぇ四歳。可愛いですね」


俺は彼女の息子に笑いかけたが、子供は恥ずかしがって高田さんの背中に隠れた。


「すみません、人見知りなもので。プレゼントですか?」


奥のテーブルで作られている花束を見て、高田さんは微笑ましいように笑った。





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