EGOISTE


「先生に想われてる女性は幸せですね」


にっこり笑って、「それじゃ行こうか」なんて二人を促す。


「失礼します」


「ええ。またいつか病院で」


「ええ。そのときは宜しくお願いします」


俺は三人仲良く手を繋いで帰っていく背中を微笑ましく見送った。


あんな家族いいな。


遠ざかっていく三人の影がどこまでも仲良く寄り添って伸びているように見えた。


「お待たせしました」


その声で、俺は店の中に目を戻した。




―――――

――


ご馳走は作った。千夏の好きな筑前煮、筍と山菜のおこわ。焼き鳥に、なすの揚げ浸しetc……


冷蔵庫に『国士無双』がちゃんと冷えてることを確認して。


テーブルセットよし!


花束OK!


あとは……


俺はジーンズのポケットから小さな箱を取り出した。


白い正方形の形をしていて、濃淡二種類のピンクのリボンが飾られている。


この中の中身は




言うまでもなくエンゲージリングだ。






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