EGOISTE
高田さんは俺をまっすぐに見据えるとまたクスリと笑顔をもらした。
笑われてるのにちっとも嫌味じゃない。
不思議な笑顔だった。
「先生、何か悩んでらっしゃる?」
高田さんは出し抜けに俺に問いかけてきた。
「え?悩み?」
「わたしの勘違いかしら。そんな風に見えたから」
悩みっちゃ悩みだけど……
院内ではごく普通に振舞ってたつもりなのに、俺ってわかりやすいのかな?
「高田さん、元彼って何人ぐらいいるんですか?」
俺は前置きもなく、ストレートに聞いた。
きょとんとして、目をしばたく。
「元彼……ですか?1人、いや2人かな?ちゃんとお付き合いしたのは全員で2人です」
ちゃんと…ってどこまでを言うんだろう。
俺は高校から大学生まで付き合ってた彼女と、歌南とそのあと1ヶ月ぐらい付き合った大学の先輩と千夏。
しめて4人だ。
「先生はもてそうですもんね。経験豊富そう」
高田さんはにこやかに笑う。
「いやいや、俺なんて捨てられ人生ですよ」
エアコンがきっちりかかっていて、涼しいはずなのに、額から汗が流れてくる。