EGOISTE

「きれいだよ。アロワナは水面より上にいる虫に飛びついて捕食することができる。


その光景が龍に似て人気があるんだぜ?」




気高く、美しく、だけど狙った獲物を決して取り逃がさない。


鮮やかな手口と見事なまでの頭脳、行動力はアロワナのそれと酷似している。



俺と水月は水上を飛ぶ、虫だ。


水面下で静かにそれを狙っていたのは、他ならない鬼頭だった。



俺たちは当時16歳のガキの手の内にあっさり捕まったっていうわけだ。





俺はアロワナみないな女をもう一人知ってる。




歌南だ―――






「褒めてるんだか、けなしてるんだか」


鬼頭はため息のような小さな吐息を吐き出した。


その仕草が17歳の女子高生っぽく見えた。


「褒めてるんだよ、きれいだって」


水月は持ち前の甘い台詞で鬼頭を宥めると、「失礼」と言ってタバコを取り出した。


水月も……どこまで天然なんだか。


意識して出してるとは思えない言葉。さすがにフォローもうまい。


俺も思ったことをすぐに口に出すほうだけど、俺の言葉は棘だらけだとみんなは言う。





その棘で傷を負う、と女たちは言う。




別に傷つけるつもりはないのに、女が求めるのはやっぱり水月みたいなので。




俺には何が足りないのだろうか。



千夏も水月みたいな男を求めているのだろうか。





千夏に……会いたくなった。



切実に。












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