あたしを阻止してください。
大切なもの
* 茜side *
蝉が激しく鳴く、
8月―――…。
38度の中、風は吹かない。
陽炎は揺れる。
「…すい、ません…」
瞳から出た汗が頬を濡らす。
「…ほっんと、厄介者。消えないものかしら?」
鼻で笑う、担任。
「…」
あたしは何も言えなかった。
気づけば教室に日が差していた。
オレンジ色で、燃えそうな位の光を発しながら。
それは、あたし達の影を作る。
「…もぉいいわ。面倒だし…、あたしは職員室に行くから。電気よろしくね」
じゃね。って手を振りながら妙に高いヒールのせいで少しよろけながら、行ってしまった。