気まぐれ社長の犬
首が僅かに切れて血が1滴流れた。
「度胸は認めるけど、手…震えてるよ?死ぬ覚悟がないなら人を殺す仕事なんて止めときな」
心ちゃんははっとして自分の手を見た。
「くっ…じゃああんたは死ぬ覚悟、できてんのかよ!」
死ぬ覚悟?
そんなの…
「響城さんの元に来る前からとっくに出来てますよ。当たり前でしょ?」
私はにこっと微笑み、ナイフを振り上げた。
「それでも命張るって言うなら、そんな甘ったれここで殺してあげるよ」
私はナイフをおもいっきりふり下ろす。
「いやあーっ!!」
「止めろ妃和!!」
ガリッという音がしてナイフが床に突き刺さる。
そこは顔の真横、ぎりぎりの場所だった。
「は、はあっはあっ」
息を荒くする心ちゃんを見下ろして、私はその上から立ち上がった。
「嫌なんじゃん。ならごちゃごちゃ言わずに平和に生きなさいよ。あんたはそれが出来るんだからさ」
羨ましいことにね…
「妃和…」
響城さんが1歩、私に近づく。