気まぐれ社長の犬

「あの…奏女(カナメ)さん
ってどなたですか?」



私は隣に座った奏希さんに聞いてみた。

さっき奏女さんの話をした時、2人ともすごく悲しそうな顔をしてたから―――



「ああ…俺の妹なんだけどね、
病気なんだ。ずっと治療してきたんだけどもう無理らしい」



そう言って奏希さんは悲しそうに笑った。



「そうなんですか……」


「あっそうだよかったら妃和ちゃんも来てよ。あいつずっと入院してるから女の子の知り合いとか少ないんだよね」


「いいんですか?」


「もちろん」


「じゃあ行かせていただきます」


「やったあ!!あいつ喜ぶよー」



それから少しして、仕事が終わった響城さんと奏希さんと一緒に奏女さんの入院している病院に向かった。



「奏女ー元気に…うぶ!!」



ノックをして入った奏希さんの顔面に、ボールがおもいっきり飛んできた。


驚いて中を見ると、ベッドの上に高校生ぐらいの女の子が立っていた。

その周りでは看護婦数人が必死に奏希さんを止めている。


え…まさかこれが奏女さん?
あの余命短い女の子?

私の予想と違いすぎるんだけど!!



「あっ兄ちゃんいたんだ」


「いたんだじゃないだろ!!早く降りなさい!!」


「やだよー運動しとかなきゃ部活戻れないでしょ」



そう言って奏女さんはテニスのラケットを振る。



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